生成AIを会社で使い始めるなら。最初の30日でやるべきこと
生成AIの導入は、ツールの契約より業務選びから。最初の30日で、試す仕事、利用ルール、効果の測り方、継続の判断を整理します。
「どのツールを契約するか」「社員に自由に使わせてよいか」。生成AIを会社で使おうとすると、判断することが一度に増えます。そこで最初から全社の正解を決めようとせず、小さな仕事で使い方と確認方法を試してみてください。
最初の30日で目指すのは、全社展開の完了ではありません。「この仕事なら、誰が、どんな情報を使い、どう確認すれば役に立つか」を説明できる状態です。以下は、そのための進め方の一例です。
1. 最初の5日で、時間を使っている仕事を洗い出す
「AIを導入する」を目標にすると、契約した人数や利用回数だけが成果になりがちです。先に、仕事のどこを変えたいかを決めましょう。
例えば営業担当者に、先週の作業を思い出してもらいます。メールの文章を整える、提案書の構成を考える、会議のメモをまとめる。その中で、繰り返し発生し、下書きや情報整理に時間を使っている仕事を探します。
業務名だけでなく、「何を受け取り、何を作り、誰が使うか」まで書くと具体的になります。「資料作成」よりも「商談メモから、上司が確認する提案書の構成案を作る」の方が、AIに任せる範囲を決めやすくなります。
属人化した業務も候補ですが、判断の根拠が文書になっていない仕事は、そのままAIへ渡せません。社内文書検索やマニュアル作成では、まず原資料の所在と更新担当を確認します。
2. 試す仕事は3つ程度に絞る
候補を集めたら、効果が見えやすく、誤りがあっても人が確認して戻せる仕事から選びます。最初は、文章の下書き、会議内容の整理、アイデアや構成案の作成など、3つ程度に絞ると比較しやすくなります。
例えばメールなら、送信まで自動化せず、文章の下書きだけを対象にします。議事録なら、記録から決定事項と宿題を整理し、参加者が原文と照合するところまでを試します。録音を使う場合は、録音・文字起こしの扱いも事前に確認してください。
最初の対象から外す基準も決めましょう。個人情報を大量に含む資料、契約の最終判断、金額の確定、誤りが重大な影響を及ぼす仕事は、先に情報の扱いや責任分担を整理する必要があります。
3. 6〜10日目に、利用ルールと確認担当を決める
何十ページもの規程から始める必要はありません。ただし、何を入力してよいかが曖昧なまま実務で試すのは避けます。開始前に、次の項目を1枚にまとめて共有します。
- 会社が認めるサービスとアカウント
- 入力禁止の情報と、承認が必要な情報
- 顧客情報を使う場合の確認先
- AIの回答を原資料と照合する担当者
- 送信・公開・登録前に、人が最終確認する手順
- 困ったときに利用を止めて相談できる窓口
学習への利用、保存期間、外部サービスとの連携などは、契約や設定によって扱いが異なります。「有料だから何でも入力できる」とは考えず、利用する契約の条件を確認します。ChatGPTの社内ルールの記事も、整理の出発点にできます。
4. 11〜20日目は、少人数で実務を試す
全社員へのプロンプト研修を最初の大仕事にせず、担当者が実際の仕事で試す期間をつくります。開始時には、情報の扱いと回答の確認について短く説明し、担当者を一人で判断させないことが大切です。
指示文には、目的、読む相手、使ってよい材料、出力の形を入れます。例えば「次の公開済みの商品説明だけを使い、既存顧客への案内メールを作る。記載のない価格や納期は補わない」と伝えます。
うまくいかなかったときは、言い回しだけを変え続けず、材料が足りないのか、任せる範囲が広すぎるのかを見ます。使える指示と、確認が必要だった箇所を残しておけば、後から他の担当者にも説明できます。
5. 21〜27日目に、確認と修正を含めて効果を測る
比較するのは、AIが回答する時間だけではありません。材料の準備、入力、回答の確認、修正、完成までの時間を記録します。修正回数や、担当者が感じた負担、完成物の品質も合わせて見ます。
記録欄は「業務」「AIなしの時間」「AI使用時の合計時間」「修正内容」「確認者」程度で構いません。仮に従来60分、AIを使って確認・修正込みで40分なら、その差を記録します。これは記録方法の例であり、期待する削減幅ではありません。
難易度の違う仕事を比べると判断を誤ります。似た条件の作業を複数回比べ、時間が短くても重要な抜け漏れが増えたなら、そのまま成功としないでください。
6. 最後の3日で、継続・改善・中止を決める
30日目には、業務ごとに判断します。品質を保ち、確認を含めても負担が減った仕事は継続。条件を変えれば使えそうな仕事は改善。修正に手間がかかりすぎる仕事は、一度中止して構いません。
横展開する際は、ツール名だけでなく、使う原資料、指示文、確認項目、担当者の役割をセットで渡します。他部署では情報の機密性や承認手順が違うため、同じやり方をそのまま広げないことも必要です。
30日後に残したいのは、使える業務の見取り図
「とりあえずChatGPTを契約して社員に配る」より、どの仕事に使い、どこを人が確認するかを決める方が、次の判断につながります。すべての仕事をAI化する必要はありません。
まずは1つの業務を、入力する材料、AIに任せる作業、人が確認する箇所に分けてみてください。候補を選べない場合も、現在の業務を整理するところから相談できます。
